在の社会組織において、経済的生産の実力を全く欠き、父兄や、良人に寄生して、それらの男子の財力に縋《すが》って養われている婦人が、その保護者から恵まれた(むしろ偸《ぬす》み取った)金銭の大部分を衣服や装飾品の物質的欲望の満足に消費し、纔《わず》かにその一部の小額を割《さ》いて虚栄心の満足のために慈善家ぶって寄附することは、決して称揚すべき行為でなく、またその少額の喜捨が――たとい貧者の一灯という、美くしい讃辞があるにせよ――現代においては、最早何ほどの社会的効果をも挙げ得ないものであると考えているのでした。
 しかるに計らずも、このたびの食糧騒動の促した各都市の救済行為が、私の持説に裏書をしているように思われます。
 皆さんのお見受けの通り、このたびの救済行為は在来のに比べるとやや大仕掛であって、各都市はそれに補給されて内外米の廉売を盛《さかん》に実行しております。そうして、それらの寄附者の主なる人たちには、一つの婦人慈善団体も加わっていないのです。百万、五十万、二十万というような大きな額のは勿論、一万、二万という額のものは悉《ことごと》く富豪階級における男子たちの名に由って提供されてお
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