手の上の花
鴨頭草《つきくさ》の花、手に載せて
見れば涼しい空色の
花の瞳《ひとみ》がさし覗《のぞ》く、
わたしの胸の寂《さび》しさを。
鴨頭草《つきくさ》の花、空色の
花の瞳《ひとみ》のうるむのは、
暗い心を見|透《とほ》して、
わたしのために歎くのか。
鴨頭草《つきくさ》の花、しばらくは
手にした花を捨てかねる。
土となるべき友ながら、
我も惜《をし》めば花も惜し。
鴨頭草《つきくさ》の花、夜《よ》となれば、
ほんにそなたは星の花、
わたしの指を枝として
しづかに銀の火を点《とも》す。
一隅《いちぐう》にて
われは在り、片隅に。
或《ある》時は眠げにて、
或《ある》時は病める如《ごと》く、
或《ある》時は苦笑を忍びながら、
或《ある》時は鉄の枷《かせ》の
わが足にある如《ごと》く、
或《ある》時は飢ゑて
みづからの指を嘗《な》めつつ、
或《ある》時は涙の壺《つぼ》を覗《のぞ》き、
或《ある》時は青玉《せいぎよく》の
古き磬《けい》を打ち、
或《ある》時は臨終の
白鳥《はくてう》を見守り、
或《ある》時は指を挙げて
空に歌を書きつつ………
寂《さび》し
前へ
次へ
全250ページ中246ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
与謝野 晶子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング