くしく
すべて香れる人の華。


  寿詞

    蘇峰先生古稀
大地の上に降《くだ》り来て
文章星《ぶんしやうせい》の在《いま》すかな。
三代《みよ》の帝と国民《くにたみ》に
報ゆる心澄み徹る
時代の先駆、蘇峰先生。

想は明健まどかにて、
筆は暢達はなやげり。
常に四方《しはう》を警《いまし》めて
仮りの一語も生気あり。
天下の恩師、蘇峰先生。

当世《たうせ》の韓蘇《かんそ》、大史公《たいしこう》、
奇しき力を身に兼ねて、
七十路《ななそぢ》経たる来し方も
千歳《ちとせ》の業《わざ》を立てましぬ。
老いざる巨人、蘇峰先生。

寿をたてまつる、先生よ、
とこしへ若くおはしませ。
豊かに高きその史筆
明治の篇を結びませ。
燦たる光、蘇峰先生。


  〔無題〕

銀座であつたと、人の噂、
それはもうベルが鳴らない前の事。
浮動層のあなたに、
併し猶、映写幕に消えぬ
新居格先生のプロフイル。


  衣通姫

    (今井鑷子女の新舞踊のために作る。)
今宵のこころ躍るかな、
君来たまふや、来まさぬや、
隔てて住めば藤原も、
近江国にことならず。

あやしく躍る心かな、
何がつらき
前へ 次へ
全116ページ中86ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
与謝野 晶子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング