の金と真紅の時。
〔無題〕
わたしの門前の泥、霜どけの、
これが東京まで続いてゐよう、
丸ビルの口で誰れかが靴を洗つてゐよう、
下級の新聞社員が
また自弁で円タクを飛ばすであらう。
〔無題〕
今、煙突掃除夫の手、
地獄の底を掻きまはした手、
やけ[#「やけ」に傍点]になりきつた手、
痛快を死に賭けて悔いない手、
その母が見たら泣きませう。
〔無題〕
さうでない、さうでないと
否定ばかりを続けて、
青年が老人になつて行く。
手を挙げよ、
誰れが新しい道を見つけたか。
〔無題〕
ところが、繋がつてゐるのです、
一つを切ると
一つが死ぬのです、
いや、皆が死ぬのです、
人間と草木とはちがひます。
〔無題〕
かきまはすと触れあつて
がりがりと音のする
幾塊かの氷片、
バケツの中の世界は
生中《なまなか》[#「生中」はママ]な暖気で政府を失つてゐる。
〔無題〕
困る、舁《か》く人がゐない、
葬式は出して欲しいのに。
困る、血のつづかぬ同志が
もう棺《くわん》の前でごたごただ。
死人が叫ぶ、聞えない。
紅顔の死
江湾鎮の西の方《
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