さわげるも
よそに聴く安き伏屋《ふせや》よ
めざむれば海は和《な》ぎたり
はしきやし美くし妻《づま》の
昨夜《よべ》磯に得たる刺櫛
床に敷き寝《い》ねてし夢ぞ
上※[#「くさかんむり/(月+曷)」、第3水準1−91−26]や星や竜神
めづらかに尊かりしな
あな愚《うつ》け此櫛こそは
昨《きそ》の朝七日七夜を
御方《おんかた》の御裳《みも》の端だに
得ばやとて相摸七浦
上総《かづさ》潟長柄《かたながら》の辺《へ》にも
寄らずやと尋ねわびたる
纒向《まきむく》の日代《ひしろ》の宮の
御舎人《みとねり》が詞《ことば》の御櫛《みくし》
さらば妻帆岡の方《かた》に
御軍《みいくさ》の跡を追はまし
[#改ページ]
明治三十八年
〔無題〕
あさはかにものいふ君よ、
うまびとは耳もて聴かず、
いとふかき心に聴きぬ。
世はみな君をあざむとも、
とまれ、千とせのいちにんに
うなづかれまくものはのたまへ。
恋ふるとて
恋ふるとて君にはよりぬ、
君はしも恋は知らずも、
恋をただ歌はむすべに
こころ燃え、すがた※[#「やまいだれ+瞿」、第3水準1−88−62]せつる。
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