うに、
幾ところからもせり出した
染物屋の物干の
高い大きな布のかたまり。
なんとそれが
堂々と揺れて光ることだ。
日本銀行と三越《みつこし》の
全身不随症の建物が
その蔭で尻餅をついてゐる。
〔無題〕
おどろけるは我なるに、
よろよろとする自転車、
その自転車乗り
わが前に
おまへは護謨《ごむ》製の操人形《あやつり》か。
〔無題〕
竹を割りて
まろく幹をつつみ、
黒き細縄もて縛れり。
簡素ながら、
いと好くしたる
職人の街路樹の愛。
〔無題〕
一人の爺《おやぢ》チヤルメラを吹き、
路ばたにがつしり[#「がつしり」に傍点]と据ゑぬ、
大臣、市長、頭取の
椅子よりも重く。
よいかな、爺、
我等の児になくて叶はぬ
飴屋の荷の台。
〔無題〕
銀座通りの夜店の
人込のなかの敷石に、
盛上がりてねむる赤犬、
大胆のばけもの、
無神経のかたまり。
たれもよけて過ぎ行く。
〔無題〕
白き綿の玉の如き
二羽のひよこが
ぴよぴよと鳴き、
その小さきくちばしを
母鶏の口につく。
母鶏はしどけなく
ななめにゐざりふし、
片足を出だして
ひよこにあまえぬ。
六
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