なき畫《ゑ》とは何れぞや
かくもいみじきつみ人の
ふるさとこそは君しるや
はたまた美《よき》をつみ人と
名づくる国へつれこしや誰
ひとぢ琴
もとより琴の緒にしあれど
うらみにひくき音もこもり
のろひにたかきおともせむ
ほそ緒しら木のひと柱《ぢ》琴
君ふれ給ふことなかれ
もとより恋の琴なれば
はだやはらかういだかれて
きくべき胸のささやきを
あこがるるともしたふとも
あゝ君ふるることなかれ
ひと緒の琴のわが恋は
ひとりの人にふれてより
やむよしもなき音《ね》は高う
恋にうらみにある時は
人をのろひにやすきひまなき
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明治三十六年
玉の小櫛
一
竜神うろくづ海のつかひ女《め》
肩さし手さし供奉《ぐぶ》しまつるは
管《すが》だたみ八つ皮だたみ八つ
数へおよばぬ帛《きぬ》うはだたみ
三重《みへ》の御輿《みこし》に花とこぼれて
赤《あけ》の御袴《みはかま》ましら大御衣《おほみぞ》
おん正身《さうじみ》のみじろぐたびに
小波わきて飾る黒髪
潮《うしほ》の音《ね》こそ四方《よも》には通へ
前《さき》追ふ魚が頭頭《かしらかしら》の
瑠璃の燭《ひ》を
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