元旦の歌
やれ、春が来た、ほんのりと
日のさす中に、街々の
並木二側、梅ねずみ。
やれ、春が来た、この朝の
空は藤色、日本晴
下に並木の梅ねずみ。
やれ、春が来た、金の目が
どの窓からもさし覗く
そして並木の梅ねずみ。
春の初めに
春の初めに打て、打て、鼓。
打てば小唄に、やれ、この、さあ、
四方《よも》の海さへ音《ね》を挙げる。
春の初めに振れ、振れ、袂。
振れば姿に、やれ、この、さあ、
天つ日さへも靡き寄る。
春の初めに舞へ、舞へ、舞を。
舞へば情に、やれ、この、さあ、
野山の花も目を開く。
春の初めに飲め、飲め、酒を。
飲めば笑らぎに、やれ、この、さあ、
福の神さへ踊り出す。
夜の色
うれしきものは、春の宵、
人と火影《ほかげ》の美くしい
銀座通を行くこころ。
それにも増して嬉しきは、
夜更けて帰る濠ばたの
柳の靄の水浅葱《みづあさぎ》。
一九一八年よ
暗い、血なまぐさい世界に
まばゆい、聖い夜明が近づく。
おお、そなたである、
一千九百十八年よ、
わたしが全身を投げ掛けながら
ある限りの熱情と期待を捧げて
この諸手をさし伸べるのは
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