明けん朝《あした》に関心を、
もち初めしよと我れは聞く。


  〔無題〕

確かにも脈ぞ打ちたる、
安んぜよ愁ふるなかれ、
阿佐ヶ谷の博士来たまひ、
斯くも云ひ慰めませど、
我れは聞く、こと新しと。
友のE歩み寄り来て、
話せじ見ば足りぬべし、
としも告げ、一揖《いちいふ》をして、
抜足に病室を出づ。
何となく昨日と今日の、
変れるを下に悟れど、
我がやまひいちじるしくも、
重りぬぞなど思はんや、
※[#「執/れっか」、10巻−490−上−12]の度を人の計れど、
たださんと我れはせぬなり、
初めよりせぬことするは、
恥しき事と思へば。

[#改ページ]

 昭和十四年


  或る日

こし方を書き綴れよと、
云ふ人のあるはうるさし。
未来をばいかに夢むと、
問はるべき人にあらずと、
我れはやく知らぬにあらず、
知りてなほ、さはあらんやと、
目に見えぬものにあらがひ、
自《みづか》らの思ひ上れる
こころざし、世の笑ふとも、
我れならで、我れを正しく、
述べて云ふもののあらねば、
憚らず今云ひ放つ、
何ごとも昔はむかし、
今は今、未来のみこそ、
はかりえぬ光なりけれ。
朝夕におの
前へ 次へ
全116ページ中111ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
与謝野 晶子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング