が尠《すくな》くない。それらの婦人が自己の醜を忘れて、第二種の売淫婦ばかりを良心の麻痺した堕落婦人であるように侮蔑するのは笑うべきことである。私はそれらの婦人が醜業婦を憎むのを見るたびに、彼らは無意識に商売|仇《がたき》を憎んでいるのであるという感を禁じ得ない。
 私は娼婦の発生した主《おも》な原因を以上のように推定する。即ち男子の性欲の過剰と好新欲とが第一因となり、女の経済的無力が第二因となって発生したのである。しかし昔から現代に到るまでの間にはこの外いろいろの原因が加《くわわ》っている。その重なものをいえば、娼婦の需要者たる男の側に、経済的事情と、年齢の関係と、その他の事情から来る結婚不能者もしくは結婚未能者が多数にある。ここにいう結婚とは妻を迎えて家庭を作ることである。即ち或男は妻を養う財力のないために結婚を避けねばならない。薄給と薄利の職業に従事している男及び無産無職の男は悉《ことごと》く結婚不能者である。また或男は年齢が若いのと成年の教育を受けていないのとで社会の習慣が結婚を許さない。この意味で多数の学生や兵士の類は結婚未能者である。また経済事情からも年齢関係その他からも結婚
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