しましたらどんなことが起こりますかと心配ばかりいたしました」
 浮舟の姫君は、自分が宮に多く心を惹《ひ》かれているときめてこの人たちのいっているのを聞くのも恥ずかしい、自分はどちらをどうとも判断もできないのに苦しんでいるのである、夢の中のようになす術《すべ》を知らないのである、はげしく自分をお思いになる方に対しては、なぜこうまでもと感激はしているが、良人《おっと》と思い、月日の長く積もった人から離れてしまおうとは思えないためにこんな煩悶がされるのである、右近が言ったように、これから表面に出て悪いことが起こってくればどうしようとつくづくと思い沈んでいた。
「私はどうしてでも死にたい、人並みでない情けない私になったのだもの、こんな情けないことは低い身分の人たちにだってたくさんないはずね」
 こう言って姫君はうつ伏しになって泣く。
「そんなに御心配をなさるものではありません。お心を少しでも楽にお持ちあそばすようにと思って申し上げたことでございますよ。お心に苦しいことがありましてもお気にとめておいであそばさないようにおおようにしておいでになりましたあなた様が、この問題が起こりました時からいらい
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