いていて、少将は上品でない表情を見せて言うのだった。
「地方官階級の家と縁組みをすることなどは人がよく言うことでないのだが、現代では貴族の婿をあがめて、後援をよくしてくれることに見栄《みえ》の悪さを我慢する人もあるようになったのだからね。どうせ同じようなものだとしても、世間には、わざわざ継《まま》娘の婿にまでなってあの家の余沢をこうむりたがったように見えるからね。源少納言や讃岐守《さぬきのかみ》は得意顔で出入りするであろうが、こちらはあまり好意を持たれない婿で通って行くのもみじめなものだよ」
仲人《なこうど》は追従男で、利己心の強い性質から、少将のためにも、自身のためにも都合よく話を変えさせようと思った。
「守の実の娘がお望みでしたら、まだ若過ぎるようでも、そう話をしてみましょうか。何人もの中で姫君と言わせている守の秘蔵娘があるそうです」
「しかしだね、初めから申し込んでいた相手をすっぽかして、もう一人の娘に求婚をするのも見苦しいじゃないか。けれど私は初めからあの守の人物がりっぱだから感心して、後援者になってほしくて考えついた話なのだ。私は少しも美人を妻にしたいと思ってはいないよ。貴
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