る悪くなった。
「初めから実子でないという話は少しも聞かなかったじゃないか。同じようなものだけれど、人聞きも一段劣る気がするし、出入りするにも家の人に好意を持たれることが少ないだろう。君はよくも聞かないでいいかげんなことを取り次いだものだね」
と少将が言うので仲人はかわいそうになり、
「私はもとよりくわしいことは知らなかったのですよ。あの家の内部に身内の者がいるものですから話をお取り次ぎしたのです。何人もの中で最も大切にかしずいている娘とだけ聞いていましたから、守の子だろうと信じてしまったのですよ。奥さんの連れ子があるなどとは少しも知りませんでした。容貌《ようぼう》も性質もすぐれていること、奥さんが非常に愛していて、名誉な結婚をさせようと大事がっていられることなどを聞いたものですから、あなたが常陸家に結婚を申し込むのによいつてがないかと言っていらっしゃるのを聞いて、私にはそうしたちょっとした便宜がありますとお話ししたのが初めです。決していいかげんなことを言ったのではありませんよ。それは濡衣《ぬれぎぬ》というものです」
意地が悪くて多弁な男であったから、こんなふうに息まいてくるのを聞
前へ
次へ
全90ページ中7ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
与謝野 晶子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング