惑な自分らしいと気をめいらせているのがかわいそうに見えた。親の心にはまして不憫《ふびん》で、もったいないほど美しいこの人を、その価値にふさわしい結婚がさせたいと思う心から、二条の院でのできごとのようなことが噂《うわさ》になり、その名の傷つけられるのを残念がっているのであった。聡明《そうめい》な点もある女ながらすぐ腹をたてるわがままなところも持つ女なのである。守《かみ》の本宅のほうにも隠して住ませておくことはできたのであるが、そうしたみじめな起居《おきふし》はさせたくないとして別居をさせ始めたのであって、生まれてからずっといっしょにばかりいた母と子であるため、双方で心細く思い、悲しがっているのである。
「ここはまだよくでき上がっていないで、危険でもある家ですからね、よく気をおつけなさい。宿直《とのい》をする侍のことなども私はよく命じておきましたけれど、まったく安心はできない。でも家のほうで腹をたてたり、恨んだりする人がありますから帰りますよ」
泣く泣く母は帰って行った。
婿の少将の歓待を最も大事なこととしている守《かみ》は、妻がいっしょに家にいてしないのを怒《おこ》るのである。夫人は
前へ
次へ
全90ページ中65ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
与謝野 晶子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング