はり特別な方ですね。ただあまりに澄んだふうでいらっしゃるのが物足らないだけね」
とも若い女房はささやいていた。
驚いたふうも現わさず、感じのよいほどにその人たちが衣擦《きぬず》れの音を立てて褥《しとね》を出したりする様子も品よく思われた。
「ここにすわってもよいとお許しくださいます点は名誉に思われますが、しかしこうした御簾《みす》の前の遠々しいおもてなしを受けることで悲観されて、たびたびは伺えないのです」
と薫が言うと、
「それではどういたせばお気が済むのでございますか」
女房はこう答えた。
「北側のお座敷というような、隠れた室が私などという古なじみのゆるりとさせていただくによい所です。しかしそれも奥様の思召しによることですから、不平は申し上げません」
と言い、薫は縁側から一段高い長押《なげし》に上半身を寄せかけるようにして坐《ざ》しているのを見て、例の女房たちが、
「ほんの少しあちらへおいであそばせ」
などと言い、夫人を促していた。
もとから様子のおとなしい、男の荒さなどは持たぬ薫であるが、いよいよしんみり静かなふうになっていたから、中の君はこの人と対談することの恥ずか
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