を聞いた。
「都合よく私がここで落ち合うことになったのですが、どうでした私が前に頼んでおいた話は」
と薫が言うと、
「仰せを承りましてからは、よい機会があればとばかり待っていたのでございますが、そのうち年も暮れまして、今年になりましてから二月に初瀬《はせ》参りの時にはじめてお逢いすることになったのでございます。お母さんにあなた様の思召しをほのめかしてみますと、大姫君とはあまりに懸隔のあるお身代わりでおそれおおいと申しておりましたが、ちょうどそのころはあなた様のほうにもお取り込みのございましたころで、お暇《ひま》もないと承っておりましたし、こうした問題はことにまたお避けになる必要があると存じましてその御報告をいたしますことも控えておりました。ところがまたこの月にもお詣《まい》りをなさいまして、今日もお帰りがけにお寄りになったのでございます。往復に必ずおいでになりますのもお亡《な》くなりになりました宮様をお慕いになるお心からでございましょう。お母さんがさしつかえがあって今度はお一人でお越しになったものですから、あなた様が御同宿あそばすなどとは申されないのでございます」
こう弁の尼は答え
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