宮に琵琶の役を仰せつけに[#「仰せつけに」は底本では「仰けつけに」]なった。笛の右大将はこの日比類もなく妙音を吹き立てた。殿上役人の中にも唱歌の役にふさわしい人は呼び出され、おもしろい合奏の夜になった。御前へ女二《にょに》の宮《みや》のほうから粉熟《ふずく》が奉られた。沈《じん》の木の折敷《おしき》が四つ、紫檀《したん》の高坏《たかつき》、藤色の村濃《むらご》の打敷《うちしき》には同じ花の折り枝が刺繍《ぬい》で出してあった。銀の陽器《ようき》、瑠璃《るり》の杯《さかずき》瓶子《へいし》は紺瑠璃《こんるり》であった。兵衛督が御前の給仕をした。お杯を奉る時に、大臣は自分がたびたび出るのはよろしくないし、その役にしかるべき宮がたもおいでにならぬからと言い、右大将にこの晴れの役を譲った。薫は遠慮をして辞退をしていたが、帝もその御希望がおありになるようであったから、お杯をささげて「おし[#「おし」に傍点]」という声の出し方、身のとりなしなども、御前ではだれもする役であるが比べるものもないりっぱさに見えるのも、今日は婿君としての思いなしが添うからであるかもしれぬ。返しのお杯を賜わって、階下へ下り舞
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