おしき》、高坏《たかつき》などに料理、ふずく(麺類《めんるい》)などが奉られたのである。女房たちは重詰めの料理のほかに、籠《かご》入りの菓子三十が添えて出された。たいそうに人目を引くことはわざとしなかったのである。七日の夜は中宮からのお産養であったから、席に列《つらな》る人が多かった。中宮|大夫《だゆう》を初めとして殿上役人、高級官吏は数も知れぬほどまいったのだった。帝も出産を聞召《きこしめ》して、兵部卿の宮がはじめて父になった喜びのしるしをぜひとも贈るべきであると仰せになり、太刀《たち》を新王子に賜わった。九日も左大臣からの産養があった。愛嬢の競争者の夫人を喜ばないのであるが、宮の思召しをはばかって、当夜は子息たちを何人も送り、接客の用を果たさせもした。
夫人もこの幾月間物思いをし続けると同時に、身体の苦しさも並み並みでなく、心細くばかり思っていたのであったが、こうしたはなやかな空気に包まれる日が来て少し慰んだかもしれない。
右大将はこんなふうに動揺されぬ位置が中の君にできてしまい、王子の母君となってしまっては、自分の恋に対して冷淡さが加わるばかりであろうし、宮の愛はこの夫人に多
前へ
次へ
全123ページ中101ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
与謝野 晶子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング