ちした。遠い路《みち》を急いで宮のお着きになった時は、姫君の心に喜びがわいた。自分にもこうした感情の起こるのは予期しなかったことに違いない。新婦の女王《にょおう》は化粧をされ、服をかえさせられながらも、明るい色の袖《そで》の上が涙でどこまでも、濡《ぬ》れていくのを見ると、姉君も泣いて、
「私はこの世に長く生きていようとも、それを楽しいことに思おうともしない人ですから、ただ毎日願っていることは、あなただけが幸《しあわ》せになってほしいということだったのですよ。それに女房たちもこれを良縁だとうるさいまでに言うのですからね、なんといっても、私たちと違って年をとっていろいろな経験を持っている人たちには、こうした問題についての判断がよくできるものだろう、私一人の意志を立てて、いつまでも二人の独身女であってはなるまいと考えるようになったことはあっても、突然な今度のようなことであなたの心を乱させようなどとは少しも思わなかったのですよ。でもね、これが人の言う逃げようもない宿命だったのでしょうね。私の心も苦しんでいますよ、すこしあなたの気分の晴れてきたころに、私が今度のことに関係していなかったことの弁明
前へ
次へ
全126ページ中53ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
与謝野 晶子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング