たあとのような気がして思い乱れていた。あの手この手と計画をしながら、気《け》ぶりも初めにお見せにならなかったと中の君は恨んでいて、姉の女王と目を見合わせようともしない。自身がまったく局外の人であったことを明らかに話すこともできぬ姫君は、中の君を遠く気の毒にながめていた。女房たちも、
「昨夜は中姫君のほうにどうしたことがありましたのでございましょう」
 などと、大姫君から事実をそれとなく探ろうとして言うのであったが、ただぼんやりとしたふうで保護者の君はいるだけであったから、不思議なことであると皆思っていた。宮のお手紙も解いて姫君は中の君に見せるのであったが、その人は起き上がろうともしない。時間のたつことを言って使いが催促をしてくる。

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よのつねに思ひやすらん露深き路《みち》のささ原分けて来つるも
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 書き馴《な》れたみごとな字で、ことさら今日は艶《えん》な筆の跡であったが、ただ鑑賞して見ていた時と違った気持ちでそれに対しては気のめいる悩ましさを覚えさせられる姫君が、保護者らしく返事を代わってすることも恥ずかしく思われて、いろいろに言って中
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