も恨まれるのは苦しいことであろうと薫は告白をすることにした。
「兵部卿の宮様がいっしょに来たいとお望みになりましたから、お断わりをしかねて御同伴申し上げたのですが、物音もおさせにならずどこかへおはいりになりました。この賢ぶった男を上手におだましになったのかもしれません。どちらつかずの哀れな見苦しい私になるでしょう」
 聞く姫君はまったく意外なことであったから、ものもわからなくなるほどに残念な気がして、この人が憎く、
「いろいろ奇怪なことをあそばすあなたとは存じ上げずに、私どもは幼稚な心であなたを御信用申していましたのが、あなたには滑稽《こっけい》に見えて侮辱をお与えになったのでございますね」
 総角《あげまき》の女王は極度に口惜《くちお》しがっていた。
「もう時があるべきことをあらせたのです。私がどんなに道理を申し上げても足りなくお思いになるのでしたなら、私を打擲《ちょうちゃく》でも何でもしてください。あの女王様の心は私よりも高い身分の方にあったのです。それに宿命というものがあって、それは人間の力で左右できませんから、あの女王さんには私をお愛しくださることがなかったのです。その御様子が
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