ってしまった。中姫君のためにも中納言のためにも気の毒な結果を作ったと弁は昨夜の仲間の人たちとささやき合った。大姫君も事情はよくわかっていないのであったから、妹の女王に薫が深い愛を覚えなかったのではあるまいかと、早く帰ったことについて胸を騒がせた、妹が哀れでもあった。すべての女房たちの仕業《しわざ》の悪かったことに基因しているのであると思った。さまざまに大姫君が煩悶《はんもん》をしている時に源中納言からの手紙が来た。平生よりもこの使いがうれしく感ぜられたのも不思議であった。
 秋を感じないように片枝は青く、半ばは濃く色づいた紅葉《もみじ》の枝に、

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おなじ枝《え》を分きて染めける山姫にいづれか深き色と問はばや
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 あれほど恨めしがっていたことも多く言わず、簡単にこの歌にしたのが手紙の内容であるのを見て、愛が確かにあるようでもなく、ただこんなふうにだけ取り扱って別れてしまう心なのであろうかと思うことで姫君が苦痛を感じている時に、だれもだれもが返事を早くと促すのを聞いて、あなたからと今日は中の君に言うのも恥じられ、自分でするのも書きにくく思い
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