源氏物語
椎が本
紫式部
與謝野晶子訳

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)御寺《みてら》

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)初瀬|詣《もう》で

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#地から3字上げ]
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[#地から3字上げ]朝の月涙のごとくましろけれ御寺《みてら》の鐘
[#地から3字上げ]の水渡る時        (晶子)

 二月の二十日《はつか》過ぎに兵部卿《ひょうぶきょう》の宮は大和《やまと》の初瀬《はせ》寺へ参詣《さんけい》をあそばされることになった。古い御宿願には相違ないが、中に宇治という土地があることからこれが今度実現するに及んだものらしい。宇治は憂《う》き里であると名をさえ悲しんだ古人もあるのに、またこのように心をおひかれになるというのも、八の宮の姫君たちがおいでになるからである。高官も多くお供をした。殿上役人はむろんのことで、この行に漏れた人は少数にすぎない。
 六条院の御遺産として右大臣の有《ゆう》になっている土地は河《かわ》の向こうにずっと続いていて、ながめのよい別荘もあった。そこに往復
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