から、第三者が見れば君寵《くんちょう》に変わりはないと見えることもその人自身にとっては些細《ささい》な差が生じるだけでも恨めしくなるものらしいですよ。つまらぬことに感情を動かすのが女御《にょご》后《きさき》の通弊ですよ。それくらいの故障もないとお思いになって宮廷へお上げになったのですか。御認識不足だったのですね。ものを気におかけにならないで冷静にながめていらっしゃればいいのです。男が出て奏上するような問題ではありませんよ」
と遠慮なく薫が言うと、
「お逢《あ》いしたら聞いていただこうと思って、あなたをお待ちばかりしていましたのに、私をおたしなめにばかりなるそのあなたの理窟《りくつ》も、私は表面しか御覧にならない理窟だと思いますよ」
こう言って玉鬘夫人は笑っていた。人の母らしく子のために気をもむらしい様子ではあるが、態度はいたって若々しく娘らしかった。新女御もこんな人なのであろう、宇治の姫君に心の惹《ひ》かれるのも、こうした感じよさをその人も持っているからであると源中納言は思っていた。
若い尚侍《ないしのかみ》もこのごろは御所から帰って来ていた。そちらもあちらも姫君時代よりも全体の
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