いた。母の雲井《くもい》の雁《かり》夫人からもそのことについての手紙も始終寄せられていた。
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まだ軽い身分ですが、しかもお許しくださる御好意を、あるいはお持ちくださることかと思われます。
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と夕霧の大臣からも言ってよこされた。玉鬘《たまかずら》夫人は上の姫君をただの男とは決して結婚させまいと思っていた。次の姫君はもう少し少将の官位が進んだのちなら与えてもさしつかえがないかもしれぬと思っていた。少将は許しがなければ盗み取ろうとするまでに深い執着を持っているのである。もってのほかの縁と玉鬘夫人は思っているのではないが、女のほうで同意をせぬうちに暴力で結婚が遂行されることは、世間へ聞こえた時、こちらにも隙《すき》のあったことになってよろしくないと思って、蔵人少将の取り次ぎをする女房に、
「決して過失をあなたたちから起こしてはなりませんよ」
といましめているので、その女も恐れて手の出しようがないのである。
六条院が晩年に朱雀《すざく》院の姫宮にお生ませになった若君で、冷泉院が御子のように大事にあそばす四位の侍従は、そのころ十四、五で、まだ小さ
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