、纏頭《てんとう》用として女の衣裳《いしょう》を幾組みも贈った。
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気の抜けたようになっております人を介抱いたしますのにかかっておりまして、私はまだ何も知らなかったのでしたが、知らせてくださいませんことは、うとうとしいあそばされ方だとお怨《うら》みいたします。
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 という手紙が添っていた。おおように言いながらも恨みのほのめかせてあるのを尚侍は哀れに思った。大臣からも手紙が送られた。
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私も上がろうと思っていたのですが、あやにく謹慎日にあたるものですから失礼いたします。息子たちはどんな御用にでもお心安くお使いください。
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 と言って、源少将、兵衛佐《ひょうえのすけ》などをつかわした。
「御親切は十分ある方だ」
 と言って玉鬘《たまかずら》夫人は喜んでいた。弟の大納言の所からも女房用にする車をよこした。この人の夫人は故関白の長女でもあったから、どちらからいっても親密でなければならないのであるが、実際はそうでもなかった。藤中納言は自身で来て、異腹の弟の中将や弁の公達《きんだち》といっしょになり、今日の
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