なった。それらと、兵部卿《ひょうぶきょう》の宮のまだ元服前の王子、そのほかの親王がたの子息、御|親戚《しんせき》の子供たちを多く院はお選びになった。殿上人たちの舞い手も容貌《ようぼう》がよくて芸のすぐれたのを選《よ》りととのえて多くの曲の用意ができた。非常な晴れな場合と思ってその人たちは稽古《けいこ》を励むために師匠になる専門家たちは、舞のほうのも楽のほうのも繁忙をきわめていた。女三の宮は琴の稽古を御父の院のお手もとでしておいでになったのであるが、まだ少女時代に六条院へお移りになったために、どんなふうにその芸はなったかと法皇は不安に思召して、
「こちらへ来られた時に宮の琴の音が聞きたい。あの芸だけは仕上げたことと思うが」
と言っておいでになることが宮中へも聞こえて、
「そう言われるのは決して平凡なお手並みでない芸に違いない。一所懸命に法皇の所へ来てお弾《ひ》きになるのを自分も聞きたいものだ」
などと仰せられたということがまた六条院へ伝わって来た。院は、
「今までも何かの場合に自分からも教えているが、質はすぐれているがまだたいした芸になっていないのを、何心なくお伺いされた時に、ぜひ弾
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