あたたかい気持ちを女王は見せて、姉が年少の妹に対するふうで、宮のお気に入りそうな絵の話をしたり、雛《ひな》遊びはいつまでもやめられないものであるとかいうことを若やかに語っているのを、宮は御覧になって、院のお言葉のように、若々しい気立ての優しい人であると少女《おとめ》らしいお心にお思いになり、打ち解けておしまいになった。
これ以来手紙が通うようになって、友情が二人の夫人の間に成長していった。書信でする遊び事もなされた。世間はこうした高貴な家庭の中のことを話題にしたがるもので、初めごろは、
「対の奥様はなんといっても以前ほどの御|寵愛《ちょうあい》にあっていられなくなるであろう。少しは院の御情が薄らぐはずだ」
こんなふうにも言ったものであるが、実際は以前に増して院がお愛しになる様子の見えることで、またそれについて宮へ御同情を寄せるような口ぶりでなされる噂《うわさ》が伝えられたものであるが、こんなふうに寝殿の宮も対の夫人も睦《むつ》まじくなられたのであるからもう問題にしようがないのであった。
十月に紫夫人は院の四十の賀のために嵯峨《さが》の御堂《みどう》で薬師仏の供養をすることになった
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