気にはちょっとなれない。やはり普通の男の妻には与えにくい気がする。昔の時代にも帝王の婿にはある一事の傑出した人物が選ばれたようだ。ただ都合のよいというようなことで人選をするのは恥ずかしいことだ。右衛門督《うえもんのかみ》がやはりその希望を持っているということを尚侍《ないしのかみ》が言っていたが、あれだけはすぐれた人物だから、官位がもう少し進んでいたら私も大いに考慮するが、まだ今のところでは地位が不十分だ。理想が高くてだれとも結婚をせずにまだ独身でいて思い上がった精神が実によい。学問も相当なものだし、廟堂《びょうどう》に立って仕事のできる点で将来も有望だが、私には愛女の婿はそれでもないという心がある。相当に濃厚にある」
 こんなふうに仰せられて院はお心を悩ませておいでになった。多い候補者の中の婿選びを困難に思召《おぼしめ》す女三《にょさん》の宮《みや》以外の姉宮がたに求婚をする人はさてないのである。院がどんなにその一方《ひとかた》をお愛しになって、よい配偶をお決めになることに専心しておいでになるかということが、院内から自然に外へ聞こえ、自身を候補に擬しているものが多いのである。太政大臣も
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