干渉もあそばさなかった。夫人になられた宮に対してだけはよくお教えになるのであったから、以前よりは少しごりっぱな方らしくおなりになった。そんなことが外聞にも知れてくるのを大将は見て、すぐれた人の少ない世だ、紫の女王がこんなに長い間ごいっしょにおられても、だれにもどんなふうな、どんな女性であるという想像もさせない重々しさがあって、静かに深みのある女であることを願って、またさすがに明朗な態度をとり、他を軽侮せず自身の自尊心を傷つけない用意があると思い、何年かの前に野分《のわき》の夕べに見た面影が忘れがたかった。自身の夫人を愛する心は変わらなかったが、その人は相手にしがいのある優越した女性でなかった。恋人を妻にしたあとの安心した気持ちと、その人ばかりを見ている目の倦怠《けんたい》さで、父君が異なった幾人の夫人を集めておいでになる六条院の生活がうらやましくて、だれも皆自分の妻よりも相手にしておもしろい人のように思われてならないのである。その中で姫宮は御身分からいっても最も若い思い上がった大将などには興味の惹《ひ》かれる御存在ではあったが、表面をお飾りになるだけの愛情以外の何ものもないような院の御
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