の一言を頼みにして、未来の世を考えながらも物思わしくしていた。
源大将は女三の宮をあるいは得られたかもしれぬ立場にいた人であったから、六条院に来ておいでになるのを無関心でいることもできなかった。院の御子としてその御殿へ近づく機会もあって、それとなく観察しているのであったが、ただ若々しくおおようなという点だけのよさがある方のようで、壮麗な六条院の本殿へお住ませになって、今後の例になるまで派手《はで》な御待遇をしておいでになっても、それだけの貴女たる価値のありなしをこの人には疑われた。女房なども落ち着いた年齢の人は少なく、若い美人風、派手な騒ぎをするようなのが数も知れぬほどお付きしていて、歓楽的な空気の横溢《おういつ》しているお住居《すまい》であったから、そんな中に内気なおとなしい人が混じって物思いをしていても軽佻《けいちょう》に騒ぐ仲間に引かれて、それも同じように朗らかなふうをしていたり、毎日幼稚なお遊びの相手ばかりをしている童女の教養なさなどを院は気持ちよくは思召《おぼしめ》さなかったが、一つの趣味の目でものを見ようとされぬ方であったから、それはそれとして許して見ておいでになって、御
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