私たちなどもかわいがってくださる。毎日おもしろいことをして暮らしていらっしゃる」
 などと言っているのを夫人は聞いて、うらやましくて、そんなふうな朗らかな心持ちで人生を楽しく見るようなことをすればできたものを、できなかった自身の性格を悲しがっていた。男にも女にも物思いをさせることの多い尚侍である。
 その十一月には美しい子供さえも玉鬘《たまかずら》は生んだ。大将は何事も順調に行くと喜んで、愛妻から生まれた子供を大事にしていた。産屋《うぶや》の祝いの派手《はで》に行なわれた様子などは書かないでも読者は想像するがよい。内大臣も玉鬘の幸福であることに満足していた。大将の大事にする長男、二男にも今度の幼児の顔は劣っていなかった。頭《とうの》中将も兄弟としてこの尚侍をことに愛していたが、幸福であると無条件で喜んでいる大臣とは違って、少し尚侍のその境遇を物足りなく考えていた。尚侍として君側に侍した場合を想像していて、生まれた大将の三男の美しい顔を見ても、
「今まで皇子がいらっしゃらない所へ、こんな小皇子をお生み申し上げたら、どんなに家門の名誉になることだろう」
 となおこの上のことを言って残念がっ
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