大臣はした。源氏は思いがけないことになったと失望を感じたが、それは無理なことのようである。玉鬘も心にない良人《おっと》を持ったことは苦しいと思いながらも、盗んで行かれたのであればあきらめるほかはないという気になって、大将家へ来たことではじめて心が落ち着いてうれしかった。帝が曹司に長くおいでになったことで大将が非常に嫉妬《しっと》していろいろなことを言うのも、凡人らしく思われて、良人を愛することのできない玉鬘の機嫌《きげん》はますます悪かった。式部卿《しきぶきょう》の宮もあのように強い態度をおとりになったものの、大将がそれきりにしておくことで煩悶《はんもん》をしておいでになった。大将はもう交渉することを断念したふうである。一方では理想が実現された気になって、明け暮れ玉鬘をかしずくことに心をつかっていた。
 二月になった。源氏は大将を無情な男に思われてならなかった。これほどはっきりと玉鬘を自分から引き放すこととは思わずに油断をさせられていたことが、人聞きも不体裁に思われ、自身のためにも残念で、玉鬘が恋しくばかり思われた。宿縁は無視できないものであっても、自身の思いやりのあり過ぎたことからこ
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