は、私にとって苦痛です。
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こんなことばかりを書いて送るのであったが、玉鬘《たまかずら》は何とも返事を書かない。女房たちから、
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源氏の大臣が、あまり短時日でなく、たまたま上がったのであるから、陛下がもう帰ってもよいと仰せになるまで上がっていて帰るようにとおっしゃいましたことですから。それに今晩とはあまり御無愛想なことになりませんかと私たちは存じます。
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と大将の所へ書いて来た。大将は尚侍《ないしのかみ》を恨めしがって、
「あんなに言っておいたのに、自分の意志などは少しも尊重されない」
と歎息《たんそく》をしていた。
兵部卿の宮は御前の音楽の席に、その一員として列席しておいでになったのであるが、お心持ちは平静でありえなかった。尚侍の曹司ばかりがお思われになってならないのであった。堪えがたくなって宮は手紙をお書きになった。大将は自身の直廬《じきろ》のほうにいたのである。宮の御消息であるといって使いから女房が渡されたものを、尚侍はしぶしぶ読んだ。
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深山木《みやまぎ》に翅《はね》うち交《か
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