「そうでもない。あなただって拝見すれば陛下のおそばへ上がりたくなりますよ」
などと言いながら源氏はまた西の対へ書いた。
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あかねさす光は空に曇らぬをなどてみゆきに目をきらしけん
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ぜひ決心をなさるように。
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こんなふうに言って源氏は絶えず勧めていた。ともかくも裳着《もぎ》の式を行なおうと思って、その儀式の日の用意を始めさせた。自身ではたいしたことにしようとしないことでも、源氏の家で行なわれることは自然にたいそうなものになってしまうのであるが、今度のことはこれを機会に内大臣へほんとうのことを知らせようと期している式であったから、きわめて華美な支度《したく》になっていった。来春の二月にしようと源氏は思っているのであった。女は世間から有名な人にされていても、まだ姫君である間は必ずしも親の姓氏を明らかに掲げている必要もないから、今までは藤原《ふじわら》の内大臣の娘とも、源氏の娘とも明確にしないで済んだが、源氏の望むように宮仕えに出すことにすれば春日《かすが》の神の氏の子を奪うことになるし、ついに知れるはずのものをしいて
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