[#ここで字下げ終わり]
白い紙へ、簡単に気どった跡もなく書かれているのであるが、美しいのをながめて、
「ひどいことを」
と玉鬘《たまかずら》は笑っていたが、よくも心が見透かされたものであるという気がした。
[#ここから1字下げ]
昨日は、
[#ここから2字下げ]
うちきらし朝曇りせしみゆきにはさやかに空の光やは見し
[#ここから1字下げ]
何が何でございますやら私などには。
[#ここで字下げ終わり]
と書いて来た返事を紫の女王《にょおう》もいっしょに見た。源氏は宮仕えを玉鬘に勧めた話をした。
「中宮《ちゅうぐう》が私の子になっておいでになるのだから、同じ家からそれ以上のことがなくて出て行くのをあの人は躊躇することだろうと思うし、大臣の子として出て行くのも女御《にょご》がいられるのだから不都合だしと煩悶《はんもん》しているそのことも言っているのですよ。若い女で宮中へ出る資格のある者が陛下を拝見しては御所の勤仕を断念できるものでないはずだ」
と源氏が言うと、
「いやなあなた。お美しいと拝見しても恋愛的に御奉公を考えるのは失礼すぎたことじゃありませんか」
と女王は笑った。
前へ
次へ
全35ページ中6ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
与謝野 晶子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング