《こよみ》の博士《はかせ》からの報告もあって、玉鬘《たまかずら》の裳着《もぎ》の日を源氏はそれに決めて、玉鬘へは大臣に知らせた話もして、その式についての心得も教えた。源氏のあたたかい親切は、親であってもこれほどの愛は持ってくれないであろうと玉鬘にはうれしく思われたが、しかも実父に逢う日の来たことを何物にも代えられないように喜んだ。その後に源氏は中将へもほんとうのことを話して聞かせた。不思議なことであると思ったが、中将にはもっともだと合点されることもあった。失恋した雲井《くもい》の雁《かり》よりも美しいように思われた玉鬘の顔を、なお驚きに呆然《ぼうぜん》とした気持ちの中にも考えて、気がつかなかったと思わぬ損失を受けたような心持ちにもなった。しかしこれはふまじめな考えである、恋人の姉妹ではないかと反省した中将はまれな正直な人と言うべきである。
 十六日の朝に三条の宮からそっと使いが来て、裳着の姫君への贈り物の櫛《くし》の箱などを、にわかなことではあったがきれいにできたのを下された。
[#ここから1字下げ]
手紙を私がおあげするのも不吉にお思いにならぬかと思い、遠慮をしたほうがよろしいとは考
前へ 次へ
全35ページ中22ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
与謝野 晶子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング