りません。翅《はね》を並べるというようにして将来は国事に携わろうなどと当時は思ったものですがね、のちになるとお互いに昔の友情としては考えられないようなこともしますからね。しかしそれは区々たることですよ。だいたいの精神は少しも昔と変わっていないのですよ。いつの間にかとった年齢《とし》を思いましても昔のことが恋しくてなりませんが、お逢《あ》いのできることもまれにしかありませんから、勝手な考えですが、私のように親しい者の所へは微行《しのび》ででもお訪《たず》ねくださればいいと恨めしい気になっている時もあります」
と源氏が言った。
「青年時代を考えてみますと、よくそうした無礼ができたものだと思いますほど親しくさせていただきまして、なんらの隔てもあなた様に持つことがありませんでした。公人といたしましては翅《はね》を並べるとお言いになりますような価値もない私を、ここまでお引き立てくださいました御好意を忘れるものでございませんが、多い年月の間には我知らずよろしくないことも多くいたしております」
などと大臣は敬意を表しながら言っていた。この話の続きに源氏は玉鬘《たまかずら》のことを内大臣に告げたの
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