言、東宮|大夫《たゆう》などという大臣の兄弟たちもいたし、蔵人頭《くろうどのかみ》、五位の蔵人、近衛《このえ》の中少将、弁官などは皆一族で、はなやかな十幾人が内大臣を取り巻いていた。その他の役人もついて来ていて、たびたび杯がまわるうちに皆酔いが出て、内大臣の豊かな幸福をだれもだれも話題にした。源氏と内大臣は珍しい会合に昔のことが思い出されて古いころからの話がかわされた。世間で別々に立っている時には競争心というようなものも双方の心に芽ぐむのであるが、一堂に集まってみれば友情のよみがえるのを覚えるばかりであった。隔てのない会話の進んでいく間に日が暮れていった。杯がなお人々の間に勧められた。
「伺わないでは済まないのでございますが、今日来いというようなお召しがないものですから、失礼しておりまして、お叱《しか》りを受けそうでなりません」
と内大臣は言った。
「お叱りは私が受けなければならないと思っていることがたくさんあります」
と意味ありげに源氏の言うのを、先刻から考えていた問題であろうと大臣はとって、ただかしこまっていた。
「昔から公人としても私人としてもあなたとほど親しくした人は私にあ
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