のを、第三者になって観察するのはおもしろいことだろうと、退屈なあまりに以前からそんなことがあればいいと思っていたのがようやく時期が来たわけです」
 などと源氏はささやいていた。この前の庭には各種類の草花を混ぜて植えるようなことはせずに、美しい色をした撫子《なでしこ》ばかりを、唐撫子《からなでしこ》、大和《やまと》撫子もことに優秀なのを選んで、低く作った垣《かき》に添えて植えてあるのが夕映《ゆうば》えに光って見えた。公子たちはその前を歩いて、じっと心が惹《ひ》かれるようにたたずんだりもしていた。
「りっぱな青年官吏ばかりですよ。様子にもとりなしにも欠点は少ない。今日は見えないが右中将は年かさだけあってまた優雅さが格別ですよ。どうです、あれからのちも手紙を送ってよこしますか。軽蔑《けいべつ》するような態度はとらないようにしなければいけない」
 などとも源氏は言った。すぐれたこの公子たちの中でも源中将は目だって艶《えん》な姿に見えた。
「中将をきらうことは内大臣として意を得ないことですよ。御自分が尊貴であればあの子も同じ兄妹《きょうだい》から生まれた尊貴な血筋というものなのだからね。しかしあ
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