え朝臣《あそん》、おまえはその落ち葉でも拾ったらいいだろう。不名誉な失恋男になるよりは同じ姉妹《きょうだい》なのだからそれで満足をすればいいのだよ」
子息をからかうような調子で父の源氏は言うのであった。内大臣と源氏は大体は仲のよい親友なのであるが、ずっと以前から性格の相違が原因になったわずかな感情の隔たりはあったし、このごろはまた中将を侮蔑《ぶべつ》して失恋の苦しみをさせている大臣の態度に飽き足らないものがあって、源氏は大臣が癪《しゃく》にさわる放言をすると間接に聞くように言っているのである。新しい娘を迎えて失望している大臣の噂《うわさ》を聞いても、源氏は玉鬘《たまかずら》のことを聞いた時に、その人はきっと大騒ぎをして大事に扱うことであろう、自尊心の強い、対象にする物の善《よ》さ悪さで態度を鮮明にしないではいられない性質の大臣は、近ごろ引き取った娘に失望を感じている様子は想像ができるし、また突然にこの玉鬘を見せた時の歓《よろこ》びぶりも思われないでもない、極度の珍重ぶりを見せることであろうなどと源氏は思っていた。夕べに移るころの風が涼しくて、若い公子たちは皆ここを立ち去りがたく思うふ
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