そう、それは哀れな話だね、これまでどこにいたの」
と源氏に尋ねられたが、ありのままには言いにくくて、
「寂しい郊外に住んでおいでになったのでございます。昔の女房も半分ほどはお付きしていましてございますから、以前の話もいたしまして悲しゅうございました」
と右近は言っていた。
「もうわかったよ。あの事情を知っていらっしゃらない方がいられるのだからね」
と源氏が隠すように言うと、
「私がおじゃまなの、私は眠くて何のお話だかわからないのに」
と女王《にょおう》は袖《そで》で耳をふさいだ。
「どんな容貌《きりょう》、昔の夕顔に劣っていない」
「あんなにはおなりにならないかと存じておりましたけれど、とてもおきれいにおなりになったようでございます」
「それはいいね、だれぐらい、この人とはどう」
「どういたしまして、そんなには」
と右近が言うと、
「得意なようで恥ずかしい。何にせよ私に似ていれば安心だよ」
わざと親らしく源氏は言うのであった。
その話を聞いた時から源氏はおりおり右近一人だけを呼び出して姫君の問題について語り合った。
「私はあの人を六条院へ迎えることにするよ。これまでも何か
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