なものは必要でない。いったい女というものは一つのことに熱中して専門家的になっていることが感じのいいものではない。といって、どの芸にも門外の人であることはよくないでしょうがね。ただ思想的に確かな人にだけしておいて、ほかは平穏で瑕《きず》のない程度の女に私は教育したい」
こんなことを源氏は言っていて、もう一度末摘花へ返事を書こうとするふうのないのを、夫人は、
「返しやりてん、とお言いになったのですから、もう一度何とかおっしゃらないでは失礼ですわ」
と言って、書くことを勧めていた。人情味のある源氏であったから、すぐに返歌が書かれた、非常に楽々と、
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かへさんと言ふにつけても片しきの夜の衣を思ひこそやれ
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ごもっともです。
[#ここで字下げ終わり]
という手紙であったらしい。
底本:「全訳源氏物語 中巻」角川文庫、角川書店
1971(昭和46)年11月30日改版初版発行
1994(平成6)年6月15日39版発行
※このファイルは、古典総合研究所(http://www.genji.co.jp/)で入力されたものを、青空文庫形式にあらためて作成しました。
※校正には、2002(平成14)年1月15日44版を使用しました。
入力:上田英代
校正:kompass
2003年7月31日作成
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
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