源氏物語
蓬生
紫式部
與謝野晶子訳
−−
【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)蓬《よもぎ》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)書物|棚《だな》から、
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#地から3字上げ]
−−
[#地から3字上げ]道もなき蓬《よもぎ》をわけて君ぞこし誰《たれ》にもま
[#地から3字上げ]さる身のここちする (晶子)
源氏が須磨《すま》、明石《あかし》に漂泊《さすら》っていたころは、京のほうにも悲しく思い暮らす人の多数にあった中でも、しかとした立場を持っている人は、苦しい一面はあっても、たとえば二条の夫人などは、源氏が旅での生活の様子もかなりくわしく通信されていたし、便宜が多くて手紙を書いて出すこともよくできたし、当時無官になっていた源氏の無紋の衣裳《いしょう》も季節に従って仕立てて送るような慰みもあった。真実悲しい境遇に落ちた人というのは、源氏が京を出発した際のこともよそに想像するだけであった女性たち、無視して行かれた恋人たちがそれであった。常陸《ひたち》の宮の末摘花《すえつむはな》は、
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