えて、異性の興味を惹《ひ》く価値などはない。気の毒であるからくわしい描写はしないことにする。
 冬にはいればはいるほど頼りなさはひどくなって、悲しく物思いばかりして暮らす女王だった。源氏のほうでは故院のための盛んな八講を催して、世間がそれに湧《わ》き立っていた。僧などは平凡な者を呼ばずに学問と徳行のすぐれたのを選んで招じたその物事に、女王の兄の禅師も出た帰りに妹君を訪《たず》ねて来た。
「源大納言さんの八講に行ったのです。たいへんな準備でね、この世の浄土のように法要の場所はできていましたよ。音楽も舞楽もたいしたものでしたよ。あの方はきっと仏様の化身《けしん》だろう、五濁《ごじょく》の世にどうして生まれておいでになったろう」
 こんな話をして禅師はすぐに帰った。普通の兄弟《きょうだい》のようには話し合わない二人であるから、生活苦も末摘花《すえつむはな》は訴えることができないのである。それにしてもこの不幸なみじめな女を捨てて置くというのは、情けない仏様であると末摘花は恨めしかった。こんな気のした時から、自分はもう顧みられる望みがないのだろうとようやく思うようになった。
 そんなころであるが
前へ 次へ
全30ページ中12ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
与謝野 晶子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング