源氏物語
澪標
紫式部
與謝野晶子訳

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)逢《あ》はん

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)御|寵愛《ちょうあい》があった

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#地から3字上げ]
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[#地から3字上げ]みをつくし逢《あ》はんと祈るみてぐらもわ
[#地から3字上げ]れのみ神にたてまつるらん (晶子)

 須磨《すま》の夜の源氏の夢にまざまざとお姿をお現わしになって以来、父帝のことで痛心していた源氏は、帰京ができた今日になってその御菩提《ごぼだい》を早く弔いたいと仕度《したく》をしていた。そして十月に法華経《ほけきょう》の八講が催されたのである。参列者の多く集まって来ることは昔のそうした場合のとおりであった。今日も重く煩っておいでになる太后は、その中ででも源氏を不運に落としおおせなかったことを口惜《くちお》しく思召《おぼしめ》すのであったが、帝《みかど》は院の御遺言をお思いになって、当時も報いが御自身の上へ落ちてくるような恐れをお感じになったのであるから、このごろはお心持ちがきわめ
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