臣が出て来て、最初に太后の御殿のほうへ見舞いに行ったのを、ちょうどまた雨がさっと音を立てて降り出していたので、源氏も尚侍も気がつかなかった。
大臣は軽輩がするように突然座敷の御簾《みす》を上げて顔を出した。
「どうだね、とてもこわい晩だったから、こちらのことを心配していたが出て来られなかった。中将や宮の亮《すけ》は来ていたかね」
などという様子が、早口で大臣らしい落ち着きも何もない。源氏は発見されたくないということに気をつかいながらも、この大臣を左大臣に比べて思ってみるとおかしくてならなかった。せめて座敷の中へはいってからものを言えばよかったのである。尚侍は困りながらいざり出て来たが、顔の赤くなっているのを大臣はまだ病気がまったく快《よ》くはなっていないのかと見た。熱があるのであろうと心配したのである。
「なぜあなたはこんな顔色をしているのだろう。しつこい物怪《もののけ》だからね。修法《しゅほう》をもう少しさせておけばよかった」
こう言っている時に、淡《うす》お納戸《なんど》色の男の帯が尚侍の着物にまといついてきているのを大臣は見つけた。不思議なことであると思っていると、また男の
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