年上であることを夫人自身でもきまずく恥ずかしく思っているが、美の整った女盛りの貴女《きじょ》であることは源氏も認めているのである。どこに欠点もない妻を持っていて、ただ自分の多情からこの人に怨《うら》みを負うような愚か者になっているのだとこんなふうにも源氏は思った。同じ大臣でも特に大きな権力者である現代の左大臣が父で、内親王である夫人から生まれた唯一の娘であるから、思い上がった性質にでき上がっていて、少しでも敬意の足りない取り扱いを受けては、許すことができない。帝《みかど》の愛子として育った源氏の自負はそれを無視してよいと教えた。こんなことが夫妻の溝《みぞ》を作っているものらしい。左大臣も二条の院の新夫人の件などがあって、頼もしくない婿君の心をうらめしがりもしていたが、逢えば恨みも何も忘れて源氏を愛した。今もあらゆる歓待を尽くすのである。
翌朝源氏が出て行こうとする時に、大臣は装束を着けている源氏に、有名な宝物になっている石の帯を自身で持って来て贈った。正装した源氏の形《すがた》を見て、後ろのほうを手で引いて直したりなど大臣はしていた。沓《くつ》も手で取らないばかりである。娘を思う親心
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