いろな小道具を置いて、またそのほかに小さく作った家などを幾つも源氏が与えてあったのを、それらを座敷じゅうに並べて遊んでいるのである。
「儺追《なやら》いをするといって犬君《いぬき》がこれをこわしましたから、私よくしていますの」
 と姫君は言って、一所懸命になって小さい家を繕おうとしている。
「ほんとうにそそっかしい人ですね。すぐ直させてあげますよ。今日は縁起を祝う日ですからね、泣いてはいけませんよ」
 言い残して出て行く源氏の春の新装を女房たちは縁に近く出て見送っていた。紫の君も同じように見に立ってから、雛人形の中の源氏の君をきれいに装束させて真似《まね》の参内をさせたりしているのであった。
「もう今年からは少し大人におなりあそばせよ。十歳《とお》より上の人はお雛様遊びをしてはよくないと世間では申しますのよ。あなた様はもう良人《おっと》がいらっしゃる方なんですから、奥様らしく静かにしていらっしゃらなくてはなりません。髪をお梳《す》きするのもおうるさがりになるようなことではね」
 などと少納言が言った。遊びにばかり夢中になっているのを恥じさせようとして言ったのであるが、女王は心の中で、私
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