がらも横目は使わないのでもない。どうだろう、この人から美しい所を発見することができたらうれしかろうと源氏の思うのは無理な望みである。すわった背中の線の長く伸びていることが第一に目へ映った。はっとした。その次に並みはずれなものは鼻だった。注意がそれに引かれる。普賢菩薩《ふげんぼさつ》の乗った象という獣が思われるのである。高く長くて、先のほうが下に垂《た》れた形のそこだけが赤かった。それがいちばんひどい容貌《きりょう》の欠陥だと見える。顔色は雪以上に白くて青みがあった。額が腫《ふく》れたように高いのであるが、それでいて下方の長い顔に見えるというのは、全体がよくよく長い顔であることが思われる。痩《や》せぎすなことはかわいそうなくらいで、肩のあたりなどは痛かろうと思われるほど骨が着物を持ち上げていた。なぜすっかり見てしまったのであろうと後悔をしながらも源氏は、あまりに普通でない顔に気を取られていた。頭の形と、髪のかかりぐあいだけは、平生美人だと思っている人にもあまり劣っていないようで、裾《すそ》が袿《うちぎ》の裾をいっぱいにした余りがまだ一尺くらいも外へはずれていた。その女王の服装までも言うの
前へ
次へ
全44ページ中29ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
与謝野 晶子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング